自身のシートをタイレムレコーダに差し込み、出退勤時間を記録する「タイムカード方式」の打刻を行っている企業はまだまだ多いでしょう。
シンプルな利用方法で手軽に始められるため、なかなか電子化に切り替えるのが難しい・・と考えられている企業も多いかもしれません。
しかし、アナログでシンプルだからこそ、タイムカードの改ざんや不正打刻が横行しやすいことも事実です。
今回は、不正打刻や手書きでの時間変更といった「タイムカードの改ざん」が行われた場合の違法性や、未然に防ぐ方法について紹介していきます。
タイムカード改ざんの具体例
タイムカードの改ざんとは、「本来の実働時間にそぐわない勤務時間を、故意にタイムカードに記録する」ことと言えるでしょう。
具体的には、従業員が自身の利益のために行う場合と、上長が部下に命じて行う場合の2パターンに分けられると考えられます。
しかし、タイムカードの改ざんを行う事は違法であり、発覚した場合には懲役や罰金が課せられる可能性があります。
ここでは上記2つのパターンでそれぞれ起こりえる改ざんの例と、その際に問われる可能性が高い法律について解説します。
従業員が自身の利益のために行う場合
①残業代の水増し請求
従業員が従来の残業時間より多く記録し、残業代を稼ぐ方法です。
やり方は簡単で、既に業務が終了しているにもかかわらず打刻をせず、数時間後(帰宅後や同僚との談笑後など)に退勤打刻を行うというものになります。
一回あたりの残業請求金額は少ないものの、年単位でみると何万円・何十万円という残業代を企業側が支払う事になってしまいます。
→詐欺罪
刑法第246条に基づき、企業を騙して本来よりも多くの賃金を請求し受け取った場合には、詐欺罪で罪を問われる可能性があります。
詐欺罪が認められた場合、従業員は10年以下の懲役に処されるケースもあります。
②代理打刻
代理打刻とは、遅刻や早退がある時に、同僚や部下に、代わりにタイムカードを打刻してもらう事を言います。
本来は遅刻のはずなのに代理打刻がされている事で遅刻時間が引かれずに、通常通りの賃金を受け取る事が出来てしまいます。
→私文書偽造罪
紙のタイムカードを偽造した場合、刑法第159条に基づき、私文書偽造罪に問われる可能性があります。
その場合、従業員は1年以下の懲役、または10万円以下の罰金となります。
→電磁的記録不正作出罪
紙ではなく、ウェブ上やパソコン内のデータを編集してタイムカードの改ざんを行った場合には、刑法第161条に基づき電磁的記録不正作出罪に問われるおそれがあります。
有罪となった場合、従業員は5年以下の懲役、または50万円以下の罰金となります。
上司が部下に命じて行う場合
①勤務時間の改ざん
最も悪質なタイムカードの改ざんとして挙げられるのが、上長が部下の退勤時間を本来より早い時間に修正させ、勤務時間を改ざんする方法です。
特に繁忙期などに発生する可能性が高く、毎日夜遅くまで業務を行っているにもかかわらず、定時に退勤打刻を押させる事でサービス残業を強制させます。
これはタイムカードの改ざんだけでなく、残業代未払い問題にも繋がります。
→労働基準法 残業未払い
労働基準法第37条第1項「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては割増賃金を支払わなければならない」に違反する事になります。
法律違反として認められた場合、企業は6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金という罰則を受け、もちろん、当該従業員に対して未払い分の残業代を支払う必要があります。
また、労働基準監督署へ通報された場合には、悪質な残業不払い企業として信頼を失い、社会的にも経済的にも大きな悪影響を及ぼすでしょう。
タイムカードは基本的に、本人が自ら出退勤打刻を行った証拠として企業に提出され、遅刻や早退があった場合にはタイムカードの時間を基に賃金の差し引きを行います。
信用ベースで行われているタイムカードの集計を、事実確認が出来ないのをいい事にあの手この手で改ざんしようとする従業員には、重要性の説明を行いましょう。
タイムカードの改ざんを未然に防ぐ方法
タイムカードの改ざんは当該従業員だけの問題ではなく、改ざんを行う事が出来てしまう企業の組織体制にも問題があるといえます。
社会的信頼を失わない為にも、タイムカードの改ざんは下記のような方法で、未然に防ぐ事を意識しましょう。
・従業員へ勤怠に関するルールの周知を行う
法律違反だとしらず、「少しくらい・1回くらい大丈夫だろう」と軽い気持ちで代理打刻を頼んだり、水増し請求をしたりする従業員は多いと思われます。
タイムカードは常に正確に記録する必要がある事、数分であろうと法律違反に繋がる可能性がある事、発覚した際の処分内容、についてアルバイトを含めた全社員に対して徹底周知させましょう。
・就業規則に罰則内容を明記する
タイムカードを利用した勤怠管理は、客観的な管理が難しいため、明確なルールを決めておくことが必要になります。
打刻ミスをしてしまった時、本人が打刻を行わなければいけない事、時間外労働に関する規定、等を細かく記載し、これらのルールを破った場合には罰則がある旨を明記しましょう。
なお、罰則として懲戒処分を行う場合にはその内容が不当でないか、前もって専門家や弁護士に相談しておくことが適切です。
・勤怠管理システムを導入する
タイムカードに比べ導入時や運用に費用が掛かりますが、不正を未然に防ぐには一番効果的と言えるでしょう。
管理者がリアルタイムで出退勤状況を確認出来たり、他者による打刻を防ぐ事が出来たり、システムを導入する事で防止できる不正の幅が広がります。
また昨今では在宅勤務が増加傾向であるため、わざわざ出社しなくても自宅でPCやスマホといった端末で出退勤・各種申請をあげる事も出来ます。
まとめ
タイムカードの改ざんは法律違反であり、発覚した場合には様々な問題に発展するため、管理者はしっかりと管理を行う必要があります。しかし、紙ベースの勤怠管理には限界がある事も事実です。
タイムカードの改ざん、不正打刻をなくすためには、勤怠管理の抜本的な改革が必要であり、システムの導入が効果的と言えるでしょう。
タイムカードよりも費用がかさむため、導入には大きな決断が必要かもしれませんが、多くの勤怠管理システムでは無料トライアルを行っています。
色々なシステムを比較し、自社の働き方に合う勤怠管理システムを導入する事で、法令に沿った勤怠管理を行いましょう。
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