近年耳にする事が多くなってきた、ブラック企業。劣悪な環境で従業員を雇う企業のことを指しますが、その「劣悪な環境」の代表として挙げられるのが多すぎる「サービス残業」の実態でしょう。
サービス残業とは「賃金不払残業」とも呼ばれ、従業員が行った法定時間外労働に対して、それに見合った賃金を支払わない事を言います。
サービス残業によって労働基準法に違反した場合には「6カ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」という罰則が課せられます。この罰則は、企業がサービス残業を強要した場合はもちろん、意図せずに支払いを怠った場合にも適用されます。
また、自主的な残業は基本的には労働時間とみなされませんが、業務量が多く黙示的指示として労働時間に該当し、そのうえで残業代が支払われていない場合にも違法となる可能性があります。
サービス残業は、残業に対して適正な賃金が支払われていない状態であり、社員のモチベーションを下げ、企業活動に悪影響を与えかねない重要な問題になります。今回は、このサービス残業について、発生の要因や典型例をご紹介していきます。
サービス残業の主な要因
サービス残業が発生するそもそもの原因は何なのでしょうか。下記のような理由がその原因として挙げられる事が多いでしょう。
・法令順守の意識の低さ
会社の経営陣や人事担当者に労働基準法の知識が足りていない場合、「昔からこの社風でやっているから」と特に気にも留めず、社員にサービス残業をさせてしまいがちです。
労働基準法では、労働者が法定労働時間を超えて働いた時や、休日出勤・深夜労働をした時には割増賃金を支払わないといけないと定められています。
そしてサービス残業は、この法定労働時間外の割増賃金を支払うという要件が欠けているため、立派な違法行為となります。
サービス残業をさせる事が法律違反だということに対する意識の低さが、サービス残業を常態化させてしまっているのです。
・コストカットのため
驚くべき事に、違法と分かっていても、コストカットをはかるためにサービス残業を強いる企業は多く存在します。
サービス残業をさせれば、単純に残業代を支払わなくてすむという理由が大きいのですが、人件費削減のために人員の補充をせず、結果的に膨大な業務量が既存社員に降りかかりサービス残業につながる、というケースもあるようです。
・上司からの圧力/部下の罪悪感
バブル期の日本では、やればやった分だけ給与の昇給や昇格などの見返りがあったため、サービス残業が横行していました。
仕事が終わるまで残業するのが当たり前・決まった時間以上の賃金を要求するのは悪、という意識が根付いている、その時期を体験した世代が現在の管理職となっている場合、その風習を部下にも強要していることが多いようです。
そして、新入社員や中途社員はそういった威圧的な態度をうのみにしてしまい「仕事が終わらないのは自分のスキルが低いせいだ」「周りもみんなやっているし、頑張らないと」と考え、仕事をプライベート時間に持ちかえってしまうことがあるようです。
本来、部下の業務量を調整するのは上司の役目であり、それが出来ないのであれば人員補充や業務の見直しを行わなければなりません。
「サービス残業なんて当たり前だ」「社会じゃ通用しない」というのは立派な法律違反であり、正当性がないことを覚えておきましょう。
サービス残業の典型的な例
要因でも挙げたように、法律違反だと分かっていながらもサービス残業を強要する企業はある程度存在します。しかし、従業員自身もサービス残業になると知らなかった・故意ではなかったにしても実はサービス残業になってしまっていたというケースもあります。
・タイムカードを切った後のサービス残業
労働者が残業をした証拠を残さないため、定時でタイムカードを切らせた後に残業をさせる場合があり、サービス残業の典型例になります。
近年では、業務が終了した時間(タイムカードをきった時間)と会社の建物から出た時間の両方を記録し、その乖離時間をチェックするシステムがあるほど厳しくなりました。
・残業時間の端数が切捨てられている場合
会社によっては残業時間の端数を切り捨ててカウントしており、その単位が10分や30分単位である事から切り捨てられた端数の時間がサービス残業になります。
例えば15分単位で切り捨ての場合、29分残業しても15分しかカウントされず、残りの14分はサービス残業となります。
・所定の始業時間よりも早く出社する
残業というと、終業後に居残って仕事を行うイメージですが、朝早めに出社し業務を行う事も立派な残業になります。
「仕事が終わらないから」というのはもちろん、「朝礼や始業前に掃除があるから、30分前までに出社する」などといったのも残業とみなされます。
・「名ばかり管理職」の時間外労働
労働基準法では管理監督者に残業代を支払う義務がないため、実際には法律で定められている管理監督責任がないにもかかわらず、役職だけ管理職になっている「名ばかり管理職」が問題視されています。
管理監督者とは、経営者と一体的立場となり会社経営に関与し、業務量・労働時間に裁量があり、収入が他の社員に比べて高く、地位や待遇が保証されています。しかし、他の社員と同じ扱いでありながら「管理職」の肩書を持つために、残業代を支払わずに残業をさせているケースがあります。
この名ばかり管理職について、近年では大手企業でもいくつか事件が起きており、世間的にも広く認知されるようになり改善が進みました。しかし、中小企業ではいまだに名ばかり管理職が残っており、サービス残業がなくならない原因の一つとなっています。
上記の通り、サービス残業は違法行為であり、労働基準監督署がこれを認めた場合には速やかに未払いの残業代を支払うように指導がされます。またサービス残業が長年続いている場合、会社に対して過去分を含めて未払い残業代を請求する事も可能です。
しかし、労働基準監督署もなんの根拠もなく動く事は出来ず、通報・相談の際にはある程度しっかりした資料の用意が必要になるでしょう。
その際、自身の出退勤時間を記したタイムカードが必要になるかもしれません。しかし企業側からすれば、マイナス要因になりかねない証拠を提出するのには気が引けるでしょう。自身の会社では、過去の出退勤時間を希望するタイミングで引き出せるのか・保管はどのようになっているのか、これを機に確認してみてはいかがでしょうか。
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